人を傷つけるということ。

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ベルニーニ作「真実」(ボルゲーゼ美術館所蔵)♪

これは、バロックの天才彫刻家ベルニーニが、成功に次ぐ成功を重ねたあとで、酷い屈辱を受けた時に制作したものです。

マデルノから引き継いだサン・ピエトロ大聖堂の鐘塔を建設中に、寺院の前廊に亀裂が入っているのが見つかり、窮地に陥った彼は軽量化した設計図を再提出していましたが、最終的に鐘塔は取り壊されることになり、その作業の費用のため、ベルニーニの財産は差し押さえられました。
実際にはベルニーニだけのミスではなかったのですが、彼を徹底的に糾弾したのはライバルのボッロミーニでした。
かなり省略していますが、誹謗中傷はこれだけではありませんでした。
ベルニーニの人生で初めての、そして最大の挫折でした。

そして彼は、誹謗中傷に苦しむ主人公に「時が真実を明らかにするというのは本当だが、たいていは間に合わない」というセリフを語らせるコメディを上演し、「真実を明らかにする時」という彫刻を制作するのでした。
結局、対になるはずだった「時」の寓意像は完成できず、この「真実」の寓意像だけが残りました。
ベルニーニは、この彫刻を「真実こそ最大の美徳である」という教訓として子どもたちに残したそうです。

人はどうして他者を傷つけるのでしょう・・
この場合は嫉妬でしょうね。
他者の幸せや成功を見て、羨ましいと思うのは人間の感情としては当たり前のことです。
でも、時に、誰の心の中にも潜んでいる黒い部分が反応することがあります。
妬(ねた)み、嫉(そね)み・・
それが大きくなりすぎると、誹謗中傷へと発展するわけです。

こんなことを考えるきっかけになったのは、先週の日曜日に最終回を迎えたドラマ「3年A組 今から皆さんは人質です」を、さきほど見たからです。
本当に良いドラマでした。
先生役の菅田将暉くんの演技は実に素晴らしかったです。
次は何が起こるのかと毎回ドキドキで見ていましたが、最終回は特に感動的でした。
「匿名性の高いネット上での無責任な誹謗中傷の言葉が、他者を傷つけることもある」という強いメッセージを現代社会に放ったのです。
ドラマでは、その3年後、世の中は何も変わっていないという描写とともに、かつて誹謗中傷をネットに書きこんでいた人物が、また書きこもうとしてやめる姿もありました。
一人でも変わってくれる人があれば、それは前進の第一歩なのです。

私たちの時代は、もはやネットなしでは生きていけないほど、その利便性に依存しています。
誰もが「私を見て!」とばかりにブログやフェイスブック、ツイッターをやっている時代です。
仕事上のツールとして必要でもないのに個人情報を丸出しの方もいます(誤解なきよう、私は、本を出版する前までは自分の名前も写真も出していませんでした)。
ネット上で発信している以上、どこかで嫌な思いをすることがあるかもしれないと、覚悟しておかなければならないと思います。
人を嫌な気分にさせて面白がる方もいる世の中ですから。
やはり匿名性というのが、何をしても構わないという風に、気を大きくさせるのでしょうね。

本当に難しい時代です。
ネットの世界は諸刃の剣のような気がします。
便利だけど怖い・・
ネットから流れる情報にも注意しなければなりません。
それこそフェイクだってありますし、ウィキペディアにだって間違ったことを書いている場合が多々あります。

ベルニーニの時代は、匿名性がなかっただけでもマシかもしれませんね。

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by mayumi-roma | 2019-03-15 08:21 | ひとりごと、考えること

ローマ在住34年♪永遠の都からお伝えする、翻訳家・上野真弓の日々の暮らしや考えること。そして大好きな美術について・・


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