
ギルランダイオの「最後の晩餐」のある部屋を出ると、すぐに階段があります。
かつての修道士たちの寄宿舎、つまり僧房のある2階へ繋がるものです。
この階段を上って、さらに右側へ続く階段を見上げると・・


あまりの美しさに、最初は声も出せずに我を忘れてしまいそうになります。
余計なものをそぎ落としたシンプルさが、なおさらその美しさを際立たせているようです。
あふれる光、建築物や庭の描写、透視図法(遠近法)、そして何より優し気な表情のマリア・・
ルネッサンスの息吹を感じます。

僧房は全部で43部屋。
そのいずれにも、ベアト・アンジェリコのフレスコ画、キリストの生涯が描かれています。
私はもちろん、全室見学しました。
いずれの絵も実に素晴らしく、優しい気持ちにさせてくれます。
その中で最も気に入ったものをご紹介しましょう。

修道士たちは、それぞれ、このような僧房で暮らし、この中でも瞑想を続けていたわけです。

イエスのお墓の前で嘆き悲しむマグダラのマリアの前に、復活したイエスが現われます。
マグダラのマリアはイエスに触れようとしますが、イエスはまだ神のお許しが出ていないと、「我に触れるな」と触れられることを拒否する場面です。
先ほどの「受胎告知」と同じように、明るく柔らかい光の使い方が素晴らしいです。

これは!
なんと美しいのでしょう。
先ほどの「受胎告知」をさらにシンプルにしています。
無言の対話を効果的に表現するため、すみっこには対話の目撃者(ヴェローナの聖ペテロとされています)が描かれています。
各僧房のフレスコ画はすべて、このようなスタイルで描かれているのですが、これはもう、ルネッサンス初期の宝という他はありません。
本当に素晴らしい♪
フィレンツェも見所がたくさんあり過ぎて、なかなかサン・マルコ美術館まで手が回らないかもしれませんが、一見の価値があるところです。

聖母子と諸聖人が描かれています。
私は、物語風のシンプルなほうが好きだな~

この廊下をまっすぐ進むと、この修道院建設のパトロンだったメディチ家のコジモ1世の僧房がありますが、途中で左に続く廊下もあります。

この僧房は他の者に比べると広くなっていて2階もあります。
コジモ1世が修道院に引きこもって精神的修養を行なうための専用僧房でした。
内部にはアンジェリコ、ベノッツォ・ゴッツォリの見事なフレスコ画がありますが、すべては紹介できないので~
もちろん、写真はすべて撮っています~

もうずいぶん奥まで来ていますけど(笑)。

オリジナルの書見棚も壁棚もはずされているためガランとしていますが、それだけに建築の美しさをはっきりと見ることができます。
この図書室は、ルネッサンス期にギリシャ・ラテン語の古典文献を揃えた素晴らしいものでしたが、1800年代に蔵書の多くは、サン・ロレンツォ教会(メディチ家の菩提寺)のラウレンツィアーナ図書館に移されました。

現在では、彼を偲ぶ遺品などが展示されています。
サボナローラがシニョリーア広場で処刑されたあと火あぶりにされたのは、どんな遺物も残さないためで(信奉者にとっては聖遺物となってしまうため)、その後、灰はアルノ川に流されましたが、とある女性の信奉者は召使いに扮して洗濯に使うという理由で(昔は灰を使って洗濯をしていました)、川に流される前の燃えかすから遺物を探し出したそうです。
ただし、ここに展示されているのは、サヴォナローラが生前使用していたものです。





ロザリオがものすごく大きなことに驚きました。

処刑後は、サヴォナローラの絵をあがめることは禁止されていたため、彼だと分からないようにヴェローナの聖ペテロに見せかけて描かれたものです。
ちんばみに、ヴェローナの聖ペテロは、13世紀初頭に殉教した同じドメニコ会派の修道院長でした。

ちなみに、この当時は、シニョリーア広場にはまだネプチューンの噴水がありませんでした。


世の中の腐敗を糾弾するのは大切なことでしたが、サヴォナローラは、あらゆる芸術品を否定して虚飾の焼却をするなど、ちょっと極端すぎましたね。
息が詰まるような生活を強いられていた人々も多かったと思います。
ボッティチェッリは彼に完全に感化されて精神的危機に陥り、晩年の作品は地味なものになりましたし、ミケランジェロはこの空気がイヤでローマに逃避していました。
でも、処刑で終わるのは、やるせない気持ちになります。
いつの時代も、どこにいても、人間のすることは変わらない・・
Museo di San Marco (サン・マルコ美術館)
Piazza San Marco, 3
Firenze
入場料:4ユーロ(予約なしでも大丈夫です)
開館時間:月曜日から金曜日まで:8時15分から13時20分まで
土曜日と日曜日:8時15分から16時50分まで
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