気が狂いそう・・


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この図を見て、すぐに何だか分かる方は、よほど西洋美術史に詳しい方と言えるでしょう。
あるいは、古代ギリシャ哲学に精通した方、または、音楽理論を学んでいる方でしょう。
面白いですね~
美術と哲学と音楽に共通するなんて♪

まだウルビーノのレポートは終わっていませんが、この辺でちょっと違った話題を。

気が狂いそうな毎日を送っています(苦笑)。

ウルビーノ(ペルージャにも寄ったし)から戻ってきてすぐには、文章を書くという意味での仕事の世界にはなかなか入りこめません。
ミラノのフィギュア観戦もそうでしたが、旅行そのものは楽しくて気分転換にはなっても、日常に戻るとどっと疲れが出るし、頭の中をお仕事モードに変換させるのが実に困難になるのです。
結果、その前後の数日間はまったく使えない日々と化してしまうので、今現在、私は翻訳執筆ではなく、関連事項を個人的に研究中です。

たった一行の記述で、さほど重要な部分でなくても、まじめな性格のわたくしは、徹底的に追究してしまう癖があるのです。
若い頃は全然好きではなかったのに、今はお勉強が大好きなんですね~(ほんと!)
気が狂いそうだけど、どんどん賢くなっていくような気もしています(笑)。

さて、この図がなんだか教えましょう。
翻訳している本には、この図もありませんし、図に関する説明は1行だけですから、本の内容をばらすことにはなりませんからね~

これは、ラファエッロの「アテネの学堂」の中に登場するピタゴラスが描いた図なのです。
とっても小さいのですが、ピタゴラスの前にある板に描かれた図です。
ピタゴラスといえば、ピタゴラスの定理を思い出すでしょう。
万物は数からできていると宣言した哲学者です。

ピタゴラスは、数の中で最も重要なものは、1、2,3,4の四つだと考えました。
この四つの数字を足すと10になるからです。
この図の下部で示しているのが、そういうことです。
1,2,3,4、10をローマ数字のⅠで表わしているのが分かるでしょう?
これをテトラクテュスといいます。

上部は、ピタゴラス音律を示したものです。
ピタゴラスは、音階に呼応する周波数の比率を発見したのでした。
オクターブを2:1、完全五度を3:2、完全四度を4:3、全音を9:8と定義しました。
音楽理論を勉強している人以外にはちんぷんかんぷんですよね。
私もです。
というわけで、私はハマってしまって、これを理解しようと気が狂いそうになるほど探究したわけです。

図の上部には、ローマ数字で、左から、6、8、9、12と書かれています。
これは簡単に分かります。
そして古代ギリシャ語の文字があって、このローマ数字に呼応して音階を表わしているのです。
最上部にエポグロン(8と9の間にあるから、9:8の比率で全音という意味)、
ディアテッサロン(9と12の間にあるから、4:3の比率で完全四度という意味)、ディアペンテ(8と12の間にあるから、3:2の比率で完全5度という意味)、そして、一番下がディアパッソン(6と12の間にあるから2:1の比率でオクターブという意味)です。

古代ギリシャ語が読めたら面白いのにな~と思いました。
イタリアのリチェオ・クラッシコ(文系普通科高校)では、古代ギリシャ語が必須科目なのですが、うちの夫、大学は理系なのに、高校はリチェオ・クラッシコを出ています。
だから、この図を見せたら、すらすら読めるわけですよ!
いいなぁ・・

私、高校生の頃、国語は、英語と同様に、得意中の得意科目だったのですが、現代文のみです。
古文と漢文は大嫌いで、まるでダメでした。
ちゃんと勉強していれば、イタリア人がラテン語やギリシャ古典を読めるように、私も漢文をすらすら読めたのに・・と思いました。

こうして、私は3日間に渡ってピタゴラスおよび古代ギリシャの哲学者について、気が狂いそうになりながら、お勉強していたというわけです。
ギリシャ哲学って深すぎて、理解しようとすればするほど、気が狂いそうになります・・
何やってんだろ~と思いましたが、ちょっと賢くなったのでよしとするかな♪
でも、頭が痛くなってきたよ~


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by mayumi-roma | 2018-04-07 06:30 | 翻訳本、その他のお仕事

上野真弓、ローマ在住の翻訳家&文筆家&ツーリズム別府大使。日々の暮らしや芸術探訪、旅の記録。最新刊は訳書『ミケランジェロの焔』、著書に『教養としてのローマ史入門』、訳書『ラファエッロの秘密』など。お仕事のご依頼はoffice.uenomayumi@gmail.comへ。


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