ラファエッロの「巫女たち」@サンタ・マリア・デッラ・パーチェ教会♪
2018年 03月 01日
ほんの数年前までは、開かずの教会として有名だったのですが、慈しみの特別聖年(2015年12月8日~2016年11月20日)の以来、いつ行っても開いているようになりました。
ラファエッロの傑作を見たい方には便利になりました♪
この教会は何度もブログに登場しているのですが、教会内部のラファエッロのフレスコ画について、画像解説を書いたことがなかったので、この機会に簡単に記そうと思います。
本当は、この教会内部の各祭壇について説明しようと思っていたのですが、写真だけでもとんでもない量になってしまうので、本日はラファエッロのフレスコ画だけにします。
でも、長くなりそう・・(大汗)
ラファエッロのパトロンの一人だったシエナ出身の銀行家アゴスティーノ・キージ。
な、な、なんと、ヨーロッパ1の大富豪でした♪
サンタ・マリア・デル・ポポロ教会のキージ家礼拝堂も彼がラファエッロに設計させたもので、また、トラステヴェレのファルネジーナ荘(のちにファルネーゼ家に買い取られたので現在ではこう呼ばれていますが、もともとはキージ氏が別邸として建てたものでした)にも、ラファエッロにフレスコ画を描かせています。
そして、この教会にある一族の礼拝堂にもフレスコ画を描かせたのでした。
ちなみに、ラファエッロの手によるものは、アーチ型をした下部だけです。
上部(この写真では右半分しか写っていませんが)は、ラファエッロの下絵に基づいて弟子のティモテーオ・ヴィーティが師匠の死後に完成させたもので、4人の預言者が描かれています。
ここには、4人の巫女たちと7人の天使たちが描かれています。
キリストの誕生以前の昔、各地でキリストの降誕の神託を受けて預言した多くの巫女たちがいたのでした(少なくともそのように伝えられています)。
神託が書かれた本を閉じ、右手を天使が掲げる紙葉に伸ばしています。
そこには、「死者の復活」とギリシャ文字で書かれています。
この場面を立ったまま眺めているのがプットーです。
プットーは幼児の姿をした天使で神と人間の橋渡しをする役目を持っています。
このプットーが寄りかかる石板には、「光が来るだろう」と書かれています。
その隣にいるのが、ペルシャの巫女。
右手にペンを持ち、天使が掲げる紙葉に神託を書いているところです。
そこには、ギリシャ文字で「彼は死の運命にあるだろう」と書かれています。
天使の右手が天をさしているのは、神のお告げを聞きなさいと言っているところでしょう・・
天使の衣の透明感が素晴らしく、また、本当に空を飛んでいるかのような描写をしています。
作中人物たちの身体(特に腕)の筋肉描写はミケランジェロからの影響、身体のひねりやしぐさ、豊かな表情に関してはレオナルドからの影響が見られます。
その右には天使がいますが、この天使はおそらく位階が高いようです。
なぜなら白い衣を身に着けた他の天使と違って、ブルーと黄色の衣を身に着けているからです。
その石板には、ギリシャ文字で「天(神)は地上の箱を包み込む」(聖母マリアを仄めかすもの)と刻まれています。
そして年老いた姿で描かれたティブルの巫女も、年をとり視力が弱くなった目で、石板に刻まれた神のお告げを読みとろうとしています。
二人の巫女の間にはプットーが石板に寄りかかっています。
そこには、ラテン語で「ここに新しい血統が生まれる」と刻まれています。
上部には天使が舞い、手に持つ紙葉には「私は開けるだろう。そしてよみがえるだろう」と書かれています。
ここでは、圧倒的な静けさの中で7人の作中人物がそれぞれ自由に動きまわっています。
身体の動きが言葉になって飛び交っています。
それぞれが異なる動作をしながらも、見事な調和を保ち、美しく彩られた色彩と丁寧に描かれた細部の描写♪
巨匠たちの手法を真似ながらも、独自の世界を表現しています。
それこそが、ラファエッロの才能であり、真骨頂なのです♪
この記事は、私が現在翻訳中のラファエッロの本とはまったく関係ありません。
本の中には、この絵の画像説明はありません。
サンタ・マリア・デッラ・パーチェ教会
Piazza della Santa Maria della Pace
(ナヴォーナ広場の近くです)
私の翻訳本第一弾、「レオナルド・ダ・ヴィンチの秘密 天才の挫折と輝き」(河出書房新社)も、あわせてよろしく♪
これまでにないタイプの画期的な本で、レオナルドの人生とその作品のすべてが物語風に分かりやすく綴られています。
by mayumi-roma
| 2018-03-01 08:22
| ローマの美術・歴史散歩