長崎の大殉教図・・・


長崎の大殉教図・・・_c0206352_05162138.jpg

忘れないうちに書いておかなきゃ~

長崎の大殉教図は、ついこの間まで(といっても数年前)、こんな風に(写真の右端)、ジェスー教会のお土産品コーナーに1点だけ飾られていたのですが、先週行った時には、それがなくなっていました。

「あれ?ここにあった長崎の殉教図は?」と係の人に聞いてみると、「ない」というそっけない返事!
「どうして?」と聞くと、「長崎の展覧会に貸し出した」と・・
本当かなぁ・・
残念な思いで、しばし佇んで、その場を離れようとしなかった私たち。
すると、「分かったよ、連れて行くよ。実は、貸し出しから戻ってきたばかりで、こっちにあるんだ」。
ちなみに係の人は神父様ではありませんでした。
神父様なら、こんないい加減な対応はしませんものね♪







長崎の大殉教図・・・_c0206352_02211630.jpg
何のことはない!
その昔、もともと、これらの殉教図がかかっていた教会事務室近くの壁にありました。
「ない」なんて言わなきゃいいのに・・。
意地悪ね。
でも、最終的に見せてくれたから許してあげます。

皆さま、ここはイタリアですから(笑)、様々なシチュエーションで、「ない」や「ダメ」と言われても、しつこく食い下がりましょう!

ちなみに、この写真の右端に見えるのは、1597年、長崎で処刑された26聖人の殉教者、パオロ三木と仲間たちです。
京都で捕らえられた彼らは、まず耳たぶを切り落とされて、見世物のように市中引き回しになった後、徒歩で長崎まで行くことになります。
う~ん、だけど、絵の中の殉教者の数が26人よりずっと多いのが、気になります。
もしかしたら、それとは違う殉教図なのかもしれません。







長崎の大殉教図・・・_c0206352_02295799.jpg
こちらが、1622年に長崎で起こった元和(げんな)の大殉教図です。
ここでの写真は、どうやってもうまく撮れません。
フラッシュをたけば、フラッシュの光がかかり、フラッシュなしだと、このようにガラスにこちら側が反射します・・





長崎の大殉教図・・・_c0206352_22070135.jpg
こちら、綺麗な写真を頂きました。
時間をかけてゆっくり絵を観ると、かなり詳細に描かれていることが分かります。
斬首された首と首のない遺体、炎に包まれる殉教者、それを見物する大勢の人たち、見物人の中には西洋人もいます。
とはいえ、それほど残酷には描かれていません。
でも、それが、かえって、人間の残虐性について考えさせてくれます。

元和(げんな)の大殉教・・
江戸時代初期の元和8年8月5日(1622年9月10日)、長崎の西坂で55人のキリスト教徒が火刑と斬首で処刑されました。
処刑されたのは、神父や修道士、老若男女の信者たち。
女性や幼い子どももいたのは、宣教師をかくまった使徒の一家全員を処刑したからです。
火刑が25人、イエズス会、フランシスコ会、ドミニコ会の司祭9人と修道士数名(西洋人と日本人)も含まれていました。
残る30人は斬首。
その中には日本人だけでなく、宣教師をかくまっていたポルトガル人ドミンゴス・ジョルジの妻イサベラと彼らの息子で4歳のイグナシオ坊やもいました。
この絵は、処刑を見ていた日本人の修道士がスケッチして、1626年から1632年の間に、マカオで完成させてローマに送られたと言われています。







長崎の大殉教図・・・_c0206352_02394047.jpg
1619年11月18日、レオナルド木村と他4名のキリシタンの殉教図。
炎に包まれる殉教者たちが、絵の上部少し右寄りに見えます。





長崎の大殉教図・・・_c0206352_22170339.jpg
綺麗な写真で見てみましょう。
精霊のシンボル、鳩も左手に描かれています。
見物人が大勢いるのは同じ。

つかの間(現生)の命と、永遠(天国)の命・・・
殉教者たちは、キリストと共に永遠の命を得ることを選んだのです。
信じる者は救われると言いますが、その通りかもしれませんね。

殉教という言葉・・
イスラム系のテロリストも、殉教という言葉を使いますが、自分の死をもって他人に危害を加えるようなことは、果たして殉教と言えるのでしょうか!?

幸か不幸か、私には命をかけて守る宗教はなく・・
そんな自分でよかった・・と安堵したりもして。


私の翻訳本第二弾、「カラヴァッジョの秘密」(河出書房新社)、全国の書店で絶賛発売中で~す♪  アマゾンはこちら~   紀伊国屋書店はこちら~

長崎の大殉教図・・・_c0206352_02162930.jpg

長崎の大殉教図・・・_c0206352_01321892.jpg


私の翻訳本第一弾、「レオナルド・ダ・ヴィンチの秘密 天才の挫折と輝き」(河出書房新社)も、あわせてよろしく♪

これまでにないタイプの画期的な本で、レオナルドの人生とその作品のすべてが物語風に分かりやすく綴られています。

アマゾンはこちらから~♪


by mayumi-roma | 2016-09-30 05:09 | ローマの美術・歴史散歩

上野真弓、ローマ在住の翻訳家&文筆家&ツーリズム別府大使。日々の暮らしや芸術探訪、旅の記録。最新刊は訳書『ミケランジェロの焔』、著書に『教養としてのローマ史入門』、訳書『ラファエッロの秘密』など。お仕事のご依頼はoffice.uenomayumi@gmail.comへ。


by mayumi-roma