サン・ルカ・アカデミーの無料美術館♪

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サン・ルカ・アカデミー♪
ファサード(正面)の修復も終わって、ようやくすっきりしました。
サン・ルカ・アカデミーとは、16世紀に設立されたローマの芸術家協会です。
サン・ルカ(聖ルカ)が、聖母マリアの肖像画を初めて描いたと伝えられることから、この聖人が芸術家の守護聖人となっています。
それゆえ、芸術家協会の名称として使われています。
初代の総長は、マニエリスムの大家、フェデリーコ・ズッカリ。





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このアカデミーの最上階は、美術館となっています。
無料で開放されていますが、訪れる人はほとんどいません。
過去から現在に至るまで芸術家たちに寄付を受けた作品を収蔵品として持つアカデミーですが、展示されているのは、そのうちのわずかです。

こちらは、彫刻のギャラリー♪
ネオ・クラシック(新古典主義)のカノーヴァやトルヴァルセンの作品が中心になります。
カノーヴァは、このアカデミーの総長も務めました。
ちなみに、終身総長という栄誉を受けています。






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「馬車に乗るアポロン」Byトルヴァルセン♪

トルヴァルセンは、コペンハーゲン出身の新古典主義の彫刻家ですが、その生涯のほとんどをローマで過ごしており、彼も、このアカデミーの総長を1827年から28年まで務めています。
ヴァチカンのサン・ピエトロ大聖堂にも、トルヴァルセン作のローマ教皇ピオ7世のお墓のモニュメントが残っています。

このモニュメントについて過去記事に書いたはずだと思って、リンクを貼るために探してみましたが、書いていなかったのか、探しきれなかったのか、見つかりませんでした。
実は、トルヴァルセンは北ヨーロッパ出身のプロテスタントです。
カトリックの総本山、サンピエトロ大聖堂、しかもその中のローマ教皇のお墓の装飾ですから、カトリック教徒の芸術家がなすべきことで、異教徒(プロテスタントも含む)はご法度。
トルヴァルセンだけが唯一の例外として有名なので、ブログに書いたと思うのですが、書いていなかったのかな?
これまでローマで訪れた場所、見たもの、写真に撮ったものが膨大過ぎて、追いつかなかったのかもしれません。







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左からグエルチーノの「ヴィーナスとキューピッド」、グイード・レーニの「幸運の女神」♪





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グエルチーノの「ヴィーナスとキューピッド」♪
これは、なかなか気に入りました。
この絵は、フレスコ画をはがしたものです。
1632年に、グエルチーノの故郷、チェント(エミリア・ロマーニャ州)の近くにあるフィリッポ・アルドヴランディ伯爵所有のヴィッラ・ジョヴァニーナ(ジョヴァニーナの別邸)に描かたものです。

ギリシャ神話、それを軸にしたローマ神話、さらに英語読みでは、名称が変わるので、なんだかよく分からないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ギリシャ神話の愛と美の女神アフロディーテが、ローマ神話ではウェヌス→ヴェネレとなり、それが英語読みでヴィーナスとなるのです。
キューピッドも同様に英語読みですが、ローマ神話ではアモールもしくはクピド、ギリシャ神話ではエロスになります。
ヴィーナスの息子です。





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「アンドロメダとペルセウス」Byカヴァリエル・ダルピーノ♪

日本ではあまり知られていないかもしれませんが、ダルピーノは、カラヴァッジョの時代に、アカデミーの総長を三度も務めたほどの当時の巨匠でした。
カラヴァッジョも、そのキャリアの初期には彼の工房で働いています。
秋に発売予定の、私が翻訳中のカラヴァッジョ本にも出てきます~
お楽しみに♪

でも、不思議ですね。
カラヴァッジョは、このアカデミーの正会員にもなることができませんでしたが(ローマ画壇からは、その革新性もあって、認められていませんでした。おそらく、その才能に気づいた画壇の重鎮たちは怖くもあったのでしょう)、当時巨匠とされていて、アカデミーの総長を務めた同時代の多くの画家は、現代ではそれほど評価されているわけではありませんから。
優れた人は、必ず歴史に残るものなのですね。
考えてみたら、モーツアルトも似たようなものですね。






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この部屋には、サン・ルカ・アカデミーの歴代の総長の肖像画が飾られています。
24名分の肖像ですが、アカデミーは500点以上の肖像画を収蔵しています。

学芸員さんがとても親切で、美術館に入ると、「何かお役に立ちましょうか?」と見学者に声をかけてくれるのです。
私は、「大丈夫です。全部わかるので。」と答えたのですが、あとで、この肖像画について質問に行きました。
500点以上収蔵しているというのは、その時に教えてくれました。
正会員にもなれなかったカラヴァッジョの肖像画もあるそうです。
オッタヴィオ・レオーニ(アカデミーの総長にもなりました)の素描をもとに描かれたものだそうです。






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こちらが、三度も総長となったカヴァリエル・ダルピーノ(本名:ジュゼッペ・チェーザリ)の肖像画。
彼が自分で描いた自画像です。

彼は、16世紀から17世紀にかけて、何しろローマにおけるマニエリスムの巨匠とされていたので、ローマ市内、至るところに彼の作品が残っています。
教会だったり、宮殿だったり・・・
ブログでも過去に紹介したところがたくさんありますが、日本ではまったく知られていないので、敢えて、彼の名前は出してないかも・・






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こちらは、皆さまもご存じだと思うジャン・ロレンツォ・ベルニーニの肖像画♪
ジュゼッペ・ゲッツィ作です。
意外と言っては何ですが、ベルニーニもアカデミーの総長をしていたのですね。
彼のお父上、ピエトロ・ベルニーニもまた総長をしています。

とっても小さい美術館なので、トレヴィの泉の近くにいらしたら、是非寄って下さいね。
無料ですし♪




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最後に、皆さまにも幸運が訪れますように、グイード・レーニの「幸運の女神」の絵を贈ります~

Accademia di San Luca
Piazza Accademia di San Luca 77
トレヴィの泉の近くです。

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by mayumi-roma | 2017-06-21 05:29 | ローマ&その他の美術散歩

上野真弓、ローマ在住の翻訳家&文筆家&ツーリズム別府大使。日々の暮らしや芸術探訪、旅の記録。最新刊は訳書『ミケランジェロの焔』、著書に『教養としてのローマ史入門』、訳書『ラファエッロの秘密』など。お仕事のご依頼はoffice.uenomayumi@gmail.comへ。


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