「カラヴァッジョからベルニーニへ」展♪

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「カラヴァッジョからベルニーニへ スペイン王立コレクション」展の開催されているスクデリア・デル・クィリナーレの2階の窓から見えるクィリナーレ広場♪
上から見下ろすのもなかなかいいものですね。





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カラヴァッジョの「サロメと洗礼者聖ヨハネの首」♪

カラヴァッジョは素描しない画家です。
下絵すら描かずに、モデルを前に直接カンヴァスに描いていく作家でありました。
気に入った同じモデルを使うことがよくあったので、どこかで見たことのある顔。
老婆もサロメも、カラヴァッジョの他の絵で見たことのある顔ですね。
こういうのを探すのも楽しい♪
そして、旧約聖書の物語を、古代ではなく、カラヴァッジョの時代の当世風の人々として描いているところが、カラヴァッジョらしいですね~

私は斬首がテーマの絵は好きではありませんから、カラヴァッジョとはいえ、特に見たいと思っていた絵ではありませんが、せっかくローマに来たのだから見に行かないとね♪
きしくもカラヴァッジョの本の翻訳をしているところでありますし。
あ、でも、この絵については書かれていませんよ~

宗教的モチーフが芸術になったヨーロッパでは、洗礼者聖ヨハネという重要な聖人を扱う作品は多いですね。
サロメの物語が有名になり過ぎたってところもあるのでしょうけど。

夏に訪れるマルタ島も、カラヴァッジョの「聖ヨハネの斬首」を見るのが第一目的なのですが、何度も言うように、斬首のテーマは好きではないわたくし・・・
個人的嗜好で言えば、是非とも見たい作品ではないのです。
けれども、カラヴァッジョは好きな画家ですし、この作品が大傑作だという美術史家も多いので、やはり見ておかなければいけないな~と思って(笑)。

ちなみに、サロメとヨハネの首を描いたもので、私が唯一「美しい」と思えて好きだと言えるのは、ローマのドーリア・パンフィーリ美術館にあるティツィアーノのものです。
ドーリア・パンフィーリ美術館の記事は過去記事にたくさんあります。
一番最近のものはこちら~
カラヴァッジョ@ドーリア・パンフィーリ美術館
インノケンティウス10世@ドーリア・パンフィーリ美術館




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ベラスケスの「ヨセフのトゥニカ(衣服)」♪

これは、旧約聖書の創世記の中のお話です。
バロック時代の絵は、やっぱり聖書なしでは理解できないテーマが多いですね。
あ~、気が遠くなるほど長く複雑なお話なのですが、絵に関わる部分だけを端折って説明します。

ユダヤの祖、ヤコブの11番目の息子、ヨセフは父親に一番かわいがられていました。
後妻のラケルとの初めての子、年を取ってからできた子どもだったからです。
ヤコブはヨセフにだけ丈の長い極上のトゥニカ(衣服)を与え、兄弟たちは嫉妬に狂います。
そして、ヨセフが自分の見た夢(兄弟たちが自分にひれ伏すという夢)を話したため、ついに・・・
兄弟たちは、ある日、ヨセフを井戸に落とし(本当は殺そうとしたけど一人の兄弟に阻止される)、その後、奴隷商人に売り飛ばします。
兄弟たちは、ヨセフの長い丈の素晴らしいトゥニカ(衣服)を奪って、そこに羊の血を塗り、父親のヤコブに、「ヨセフは獣に襲われて死んだ」という話をします。

はい、この絵の場面が、まさに、その血に染まったヨセフのトゥニカ(衣服)を父のヤコブに見せているところなのです・・・
父ヤコブが驚きと悲しみのあまり、のけぞっています。

絵の中の犬が可愛い♪
これだけで、ぐっと親近感が増しますね。
遠近法は、市松模様のような床で表わしています。

ベラスケスといえば、「鏡のビーナス」や「ラス・メニーナス」や絶筆の「マルガリータ王女」などの作品を思い浮かべますが、私的には、ローマの、またしてもドーリア・パンフィーリ美術館にある「教皇インノケンティウス10世」が最高傑作だと思います。
肖像画でこれほど人間の中身を表現し得るのかと、感嘆に値する作品だと思います。


ちなみに奴隷として売られたヨセフはその後どうなるのかといえば、賢さもさることながら、予知夢を見たり、他の人の夢の解釈ができることから、どんどん出世していき、ついにはエジプトのファラオの右腕にまでなります。
そうして、ユダヤの地の大飢饉を救い、兄弟とも和解し、父親とも感動の再会を果たします・・

ああ、疲れた・・・




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ベルニーニの唯一のブロンズ作品です。
当時、スペイン王直々の依頼だったのにかかわらず、エスコリアル宮の礼拝堂に飾られたあと、すぐに別の作家のものと取り替えられました。
王様、気に入らなかったのかな?

十字架がないと、ちょっと間抜けな感じに見えなくもありません。
失礼な表現でごめんなさい。

確かに、ベルニーニは大理石のほうがずっといいように思えます。
胸部だけの肖像彫刻は別にして、静より動を表現する時にその能力が最大限に発揮されるような気がします。
その方が難しいのですけどね。




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このベルニーニの十字架上のキリストは、横から見たほうが断然良いことに気がつきました。
気がついてよかった~

本当は、とっても面白い絵があったので、そちらもご紹介しようと思いましたが、この時点ですごく疲れてしまいましたので、今日はこの辺で。

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by mayumi-roma | 2017-06-01 05:14 | ローマの美術散歩

上野真弓、ローマ在住の翻訳家&文筆家&ツーリズム別府大使。日々の暮らしや芸術探訪、旅の記録。最新刊は訳書『ミケランジェロの焔』、著書に『教養としてのローマ史入門』、訳書『ラファエッロの秘密』など。お仕事のご依頼はoffice.uenomayumi@gmail.comへ。


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