恐怖の移民局@ローマ

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噂には聞いていた悪名高き恐怖のローマ移民局・・

これができたのがいつのことは知りませんが、私はこれまで、ここに来たことがありませんでした。
滞在許可証にまつわる諸々について、その昔は、ローマの中心部、共和国広場の近くにある警察本部で手続きを行なっていたし、一時期、イタリアにしては珍しく物事が機能していた時代があって、その時代には、自分の暮らす地区にある警察分署で手続きができていたからです。
外国人の指紋登録が義務化されてからは、再び警察本部となりましたが、当時、私にはコネがあったので特別ルートで簡単に終わらせることができていました。
そしてえ、記載事項変更(住所やパスポートナンバーなど)程度のことは、近所の警察分署で即時に行なうことができていました。
手書きでしたけど~(笑)

私はイタリア人と結婚して無期限ヴィザを持っています。
この場合の滞在許可証は、留学や仕事で来る方が持つカード型ではなく、A4サイズの紙製です(最近はそれがB4サイズになったらしいですけどね)。
これがヘルシンキの出国審査で問題になるわけです(今は大丈夫だという話ですが、それでも、1度ひどい目に遭った私は2度とヘルシンキ経由を使いません)。

前のパスポート更新時(10年前)に近所の警察で滞在許可証の記載変更して以来、この種の場所には来たことがありませんでした。
それがいつのまにか、無期限ヴィザ所有の人も5年おきに写真を変更しなければならないという法律になったらしく、それを知ったのが3年前!
でも、その頃には、こちらの移民局で手続きをしなければならなくなっていたので、こんなところに行きたくないあまり、「そんなことは知らなかった」というふりをして次のパスポートの更新時に行くことに決めていました(私も自己防衛のためにイタリア人化しています、笑)。

ここに行くにあたって、一応、内務省のサイトも調べたし、友人にも聞いたし、また、カンポさんという方が今年7月に私と同じようにパスポートの更新で許可証記載事項の変更手続きに行かれていて、その様子を詳しくブログ「けちけちイタリア徒然日記・甘辛い生活」にアップされていたので、参考にしました。
カンポさんは、手続きのアポ取り、手続き当日、受け取りと3回もこの移民局に出向かれていましたが、私には3回も行く勇気はとてもなかったので、アポ取りは郵便局のキット(よく覚えていませんが、印紙代とあわせて80ユーロくらいの出費だったと思います)を使いました。
これが、10月18日のこと。
アポイントは2か月後の12月19日となりました。

郵便局のキットを使うなんて、これも初めての経験でしたが、数年前に同じような手続きをした私の友人も郵便局のキットを使ったということですし、1回、移民局に行かずに済むならば、お金がかかってもラクだと思いました。
キットの中には、滞在許可証とパスポートのコピー、印紙、キット付属の申請書類を入れて送りました。
つまり、郵便局がお金をとって、書類の郵送とアポ取りを代行してくれるわけです。
ところが~
このせいで私は移民局でとんでもない目に遭ってしまうのです。
いつの間にか、法律が変わっていたのです。





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ローマの移民局は、なんという場所にあるのでしょう!
この写真は、移民局の隣にあるジプシーの居住地区です。
移民局は警察所でもあるわけで、その警察署の隣がこういう状況だなんて、法治国家の首都としてあり得るのでしょうか!
信じられない!

ついこの間、中国人留学生(女の子)がこの移民局を訪れたあと、門を出てからひったくりに遭いました。
まだ移民局の中にいた友だちに、携帯でひったくりの事実と犯人を追跡する旨の電話をかけていました。
しかし、その電話を最後に、果敢にも犯人を追いかけた彼女は行方知らずとなってしまったのです。
数日後、遺体として発見されました。

こんな事件が起こったばかりなので、夫はもちろん心配して車で送ってくれ、帰りはどれだけお金がかかってもタクシーで帰るように言われていましたが、こんなとこ、タクシーなんて通っていないし、呼んだら来てくれるわけ~!?




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移民局の門から入る際に陸軍の兵士がチェックしますが、私が入った時は、門は開けっぱなしで、誰もいませんでした。
さすがアバウトなイタリア~





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右手に行列ができていたので、係の人にアポントの用紙を見せてどうしたらよいか尋ねました。
すると、時間になったら呼ぶので写真右端のテントで待機するように言われました。
これがそもそも間違いだったのですが、後の祭り・・

私のアポイントは10時半だったのに、夫に送ってもらったために9時20分には着いていました。
時間にルーズなイタリアなので当然と言えば当然ですが、10時半になってようやく10時にアポイントがある人たちをオフィスへ。
私が中に入れたのは11時半くらいかな。

この日は異常に寒い日でした。
それなのに2時間余りも外で待つはめに!
テントの中には当然ながら暖房器具もなく、私はブーツにダウンのロングコートで防寒していましたが、つま先がガチガチに凍るような感覚になってしまいました。
寒かった・・・
すると、当然、トイレにも行きたくなります。




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移民局の簡易トイレ・・・
真っ青です。
当然ながら男女兼用・・・
かろうじてトイレットペーパーはあったものの、吐き気を催すほど汚いです。
一度入ってみて、絶対にここでは無理だと思いましたが、我慢できない状態になっていたので、仕方なく腰を浮かして・・・
でも、かなり勇気が必要でした。
ああ、21世紀の先進国とは思えない・・・





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11時半に中に入ってからは、早かったです。
こちらのオフィスは新しくてきれい!
トイレもありました。
掲示板に名前が出て呼ばれるので、イタリアも進歩したな~と思っていたら・・
まずA室に呼ばれて、再び掲示板に名前が出るのを待ちます。
次に、B室で両手の指紋の採集です。
たぶん、このオフィスは、留学やお仕事でイタリアに来ている方は見慣れた場所ではないでしょうか?

ところが、ここで、予期せぬことが~~~!
指紋採集の係官が、「あなたはイタリア人配偶者を持つ無期限ヴィザの保持者ね。ここでは手続きできないわ。貴女の場合、郵便局のキットでアポを取っちゃいけないのよ。もうしてしまったから仕方ないけど、お金の無駄だったわね。イタリア人が家族という理由でイタリアにいる人は、0階(日本式にいうと1階)の4番窓口で手続きしなきゃいけないの。すぐに4番窓口に行って!」
すると横にいた他の係官が、「あ、でも4番窓口は12時に閉まってしまう。間に合わないかも、早く行って~~」

この時、12時2分前!
何が何だか分からないまま、階段で下に降りて、この新しくてきれいなオフィスを出て、門の正面にあった古ぼけた汚い建物の中に入って4番窓口へ。
イタリアにはよくいるタイプの仕事したくない病のヒステリックな窓口担当のバカ女が叫びまくっていました。
私の前にいた人に、「ここはもう閉めるの!もう聞かないでよ~」と。
クレーマーの多い日本だったら、絶対に問題になっていると思います。

しかし、私は、お金を払って書類を郵送してアポイントを取ったのに、このまま何もしないで帰るわけにはいかないのです!
ただでさえ、超忙しい師走なのに!
事情を説明すると、彼女にアポイントが記された用紙をひったくられただけでした。

その後、急に不安になりました。
手元に何も残っていないのです。
番号をくれたわけでもないし、アポイントを取った証拠も私の手元にはないのです。
窓口が5つくらいあるけど、番号で呼んでいるようなので、もう1度、彼女のとこに行って聞きました(窓口は閉まっていましたが)。

「いい加減にしてよ。窓口は閉まったの。少しは辛抱したらどうなの?」
「いや、でも、さっきあなたに書類をひったくられたから」
「え、何の書類?」
「無期限ヴィザの記載事項変更のアポイントの紙」
「だから、そのうち呼ばれるから、辛抱してよ」
「呼ばれるって名前で?」
これ以降、回答なし・・

いや、もう不安は募ります。
13時になりました・・
もう、ほとんど誰も残っていない・・・
でも、私と同じ状況の人が数人いました。
そして、ついに呼ばれました。

これがまた、窓口の男が最悪!
典型的な横暴イタリア人!
イタリアで窓口担当というのは、一番低いランクの仕事になるので、自己実現していないが故に、自分が強く出れる相手(彼が滞在許可証の変更手続きをするわけですから)に対して異常なまでに偉そうな態度を取るタイプ。
イタリアにはよくいるんです、こういうやつ!!

「郵便局キットで全部書類を送ったことは知っているが、別の所にいってしまって、自分の手元にはない。パスポートと滞在許可証のコピー、持ってないか?」
よかった~
私は、万が一のことを考えて、念のため、コピーを持って来ていたのでした。

しかし・・
「イタリア人の夫に養ってもらっているという証明は?一緒に連れてきた?」と。
「私は30年以上、ここに住んでいますが、夫の存在が必要だったのは、結婚後初めて家族用のヴィザを取得した時だけで、その後一度もそんなことを要求されたこともないし、最近同じような手続きをした友人たちの誰もイタリア人夫を連れて行った人はいませんけど」と答えると・・
「外で話されることを聞く必要はない(つまり、本当ではないと言いたい)。私が法律だ(自分の言うことが法律であり正しいと言いたい)。」

なにが「私が法律だ」よ!
法律のほの字も知らないくせに、偉ぶりたいだけのバカ男!
この時点で、こんな面倒くさい奴には何も言わないほうがいいことを悟ったわたくし・・・

しかし、このバカ男は、「今日のところは申請を受理してあげるが、受け取りの日に、身分証明とそのコピーを持ったイタリア人夫を同伴して来なさい」とあくまでも言い張り、受け取り用の半券にその旨記載したのでした!
むかつく~~

しかも、夫が来なければならないなら、仕事の都合もあるから、できるだけ水曜日にしてほしいと私が頼むと、それを却下して、「別にその日に来なくてもいいから」と言う。
受け取りの日付は、私がちょうど日本に出発した後・・
「これより少しだけ早くか、もしくは思いっきり遅く、2月中旬にしてくれないか」と頼むと、「できない」
仕方ないので、「その日に来るのは難しいので、受け取りに来るのは、どのくらい遅れてもいいのか」と訊くと、「2,3日」。
2,3日だなんて、よく言えたものだわね、このイタリアで!
これは嘘だと思う~
こんなことのために、私、日本行きをキャンセルなんてしません!
でも、やっぱり暗くなる・・・


ちなみに、自分の経験を踏まえて、今回確かめましたが、イタリア人配偶者を持ち無期限ヴィザを持っている人は、様々な手続きを行なう際に、郵便局でのキットを使ってはいけないそうです。
キットを使うと1年あるいは2年単位で滞在許可証を更新している移民(留学生も含めて)のオフィスに行ってしまうので、手続きができなくなるそうです。
手続きのアポ取りも、手続きも、受け取りも、必ず4番窓口に行かなければならないそうです。
つまり、3度、このとんでもない場所に来なければならないわけです。

移民たちは、郵便局のキットでアポを取って、手続き(指紋採集)のためだけにここに来ればいいだけで、カード型の滞在許可証は自分の住む地区の警察署に郵送されるというのに!

どうして、イタリア人と結婚して無期限ヴィザを持っている人だけが、このように冷遇されなければならないのでしょうか!
あり得な~~~~い!!

このあとで指紋採集に行きましたが、デジタルになっていました~~
昔はタール状の黒いものを塗られていました(大汗)
でも、いやな気分ですね・・
ここの係官がとても感じの良い人で、終わった後に、「じゃあ、〇月〇日に受け取りに来てね」と言ったので、「その日に来るのが難しいのですが、どのくらい遅れてもいいのですか?」と訊いたら、「2か月は困るけど、1か月半後くらいまでなら大丈夫よ」って!

人によって言うことが違うのもイタリアの特徴です。
何を信じたら良いのやら・・
たぶん、どうせアバウトなイタリアだから2か月たっても問題ないのでしょうが・・
ですけど、私の頭の中には、あのバカ男の威圧的な態度がいつまでも残像として残っていてしまっていたので、何もかもイヤになってしまいました・・
極端だと思うかも知れませんが、私は極端な人間なのです。
まじで、すべてを投げ捨てたくなりました。

滞在許可証の受け取りは、夫の行ける日も考慮した上で、受取日から4週間以内で行けますが、昨日は当日だったせいもあって、限りなく落ち込んでしまいました・・・

で、ここでまたカンポさんが登場です!
いえ、まったく面識のない方なのですが、しかも、私よりかなり若いと思います。
少なくとも一回り以上は・・・(汗)

安心という確証を得たかった私は、カンポさんのブログのコメント欄から、カンポさんはどのくらい遅れて滞在許可証を受け取りに行ったのかを訊ねたのでした。
ご親切にすぐに回答して下さり、ほぼ3週間後くらいとのこと。
一気に憂鬱感が解消しました~
じゃあ、やっぱり4週間くらい遅れても、全然平気だな~って思えました♪
あの指紋採集の係官の言った通りだ~と、とってもとっても安心したのでした。
カンポさん、ありがとうございました~
って、見てないだろうけど。

人間、気の持ちようなので、もうどうでもいいです。
そんなことは十中八九ないとは思いますが、万が一ダメでも、もうどうでもいいです。
単なるパスポートナンバーと写真の変更ですから、また手続きすればいいわけで。
そんなに恐れることもないなと。
誰がイタリアに屈して、日本行きを諦めるものですか!!
冗談じゃない!





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帰りは、夫の言葉に背いて、バスと地下鉄で帰りました。
初めてですよ~
こんなとこに来たの~
周りにいる人が皆泥棒にしか見えませんでした。
昼食も取らず、飲み物も飲まず、家にたどり着いた時には15時半となっていました・・

しかし、イタリア人っていうのはつくづく偽善者だと痛感しました。
日頃から難民を受け入れて優しい国民ぶりをアピールしているけど、あんなところに移民局を作って、ひどい扱いをしているじゃないですか!
しかも、郵便局のキットで大儲け!
難民は郵便局のキットは使わないかもしれませんが、でも、今日、難民申請に来ていた人もいましたよ。


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by mayumi-roma | 2016-12-21 02:24 | ローマの日常

上野真弓、ローマ在住の翻訳家&文筆家&ツーリズム別府大使。日々の暮らしや芸術探訪、旅の記録。最新刊は訳書『ミケランジェロの焔』、著書に『教養としてのローマ史入門』、訳書『ラファエッロの秘密』など。お仕事のご依頼はoffice.uenomayumi@gmail.comへ。


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