ただ今、修復中~@ミケランジェロのモーゼ像♪



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サン・ピエトロ・イン・ヴィンコリ聖堂のモーゼ像が~~
なんと修復中です。
これでは、説明することができませんね~

下段中央が、モーゼ。
その左右に旧約聖書の登場人物ラクエルとリアがいて
モーゼの上には、法王ユリウス2世。
その後ろには幼子イエスを抱える聖母像。
上段左に巫女、右に預言者が配置されています。
でも、見えるのはモーゼだけ。

このモーゼ像は、皆さまご存じのようにミケランジェロの作品です。
ローマ教皇ユリウス2世は、生前に自分のお墓の壮大な計画を立て、それをミケランジェロの作になる44対の彫刻で飾るつもりでしたが、様々なことに妨げられ計画は何度も変更されます。
その結果、現在では最初に作られた「モーゼ像」だけが残っているわけですが、最終的に「サン・ピエトロ・イン・ヴィンコリ聖堂」に収められたのは、この聖堂が
枢機卿時代のユリウス2世の管轄だったからです。
しかし、ユリウス2世はミケランジェロにシスティーナ礼拝堂の天井画「天地創造」を描かせた張本人でもあるわけですから、ミケランジェロは大変だったでしょうね。

ちなみに、この大計画のためにミケランジェロが作った幾体かの「奴隷像」が、フィレンツェのアカデミア美術館やパリのルーブル美術館に残っています。

モーゼ像は、モーゼがシナイ山で神から受け取った「十戒」を手に山を降りようとするところを表したものです。
今は修復中なので見えませんが、モーゼの左右には、同じ旧約聖書に登場するラクエルとリア姉妹がいます。
ラクエルは、美しくはないけれど子どもを生める女。
リアは、美しいけれど子どもが生めない女。
父親の命令で、二人とも同時に同じ男性に嫁いだという話です。

この作品にミケランジェロが取りかかったのは30歳の頃でした。
そして、完成したのはなんと70歳!
この像のために40年間も翻弄され続けたわけです。
そういうわけで、ミケランジェロは、モーゼ像を「わが人生の悲劇」と呼んでいたそうです。





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この写真は、2年前に撮った写真です。

モーゼの頭には2つのツノがあるように見えます。
この解釈には色々と説がありますが、シナイ山で神から「十戒」を受け取って山を降りる時に、モーゼの額に現れた2つの光を表したものであるとの見方が強いです。

また、視線の鋭さは、ミケランジェロそのものであるとも言われています。
誇り高く、何事にも厳しかった彼の性格そのものが映し出されているそうです。
でも、私には、厳しいと言うより、なんだか悲しそうに見えます。

最後に、このモーゼ像が完成した時のミケランジェロの言葉♪
「Perche' non parli?」(何故、喋らないんだ?)
自分で彫り上げたとはいえ、その、あまりのリアリズムに我を忘れて、叫んだようです。




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祭壇の下に祀られた聖ペトロを牢獄に繋いでいた鎖♪
こういう聖遺物を重要な聖堂に飾ることは大変重要なことだったのですが、真偽のほどは定かではありません。
でも、私は、人々がずっと信じて大切にしてきたことに大きな意味があると思うので、本物だと信じることにしています。

祭壇の後ろには、1577年にヤコポ・コッピの描いた「聖ペテロの解放」のフレスコ画が見えます。
1513年にラファエッロがヴァティカンの教皇居室の間に描いたものを見て影響を受けたのでしょうね。
ちなみに、その「ラファエッロの間」もユリウス2世が描かせたものです。
ユリウス2世は、軍人教皇と呼ばれるほど戦争に明け暮れていた教皇ですが、現在も私たちが天才たちの芸術品を鑑賞することができるのは、この方のおかげかもしれませんね。


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by mayumi-roma | 2016-10-25 06:12 | ローマの美術・歴史散歩

上野真弓、ローマ在住の翻訳家&文筆家&ツーリズム別府大使。日々の暮らしや芸術探訪、旅の記録。最新刊は訳書『ミケランジェロの焔』、著書に『教養としてのローマ史入門』、訳書『ラファエッロの秘密』など。お仕事のご依頼はoffice.uenomayumi@gmail.comへ。


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