ラテン語のすすめ・・

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今日は、息子が高校時代、2年生から5年生までの4年間お世話になった、ラテン語の家庭教師の先生がいらっしゃいました~
息子と先生はとても良い関係を築いているため、先生曰く、「決して終わらない関係」で、メールでやり取りをしたり、時間があればお互いの家を訪問し合っているのです。

現役の高校教師でありますが、その博識ぶりは、そのへんの大学教授以上だと思います。しかも、考え方が大変若い!
まずは未来を担う若者の意識を改革しようという理想に燃えて高校教師をしていたのですが、さすがにもう限界だそうです。
先生は、文系普通科高校で教えているのですが、高校に入ってくる子たちが小中学校で何も学んで来てないとおっしゃるのです。ろくなイタリア語も話せない、書けないそうです(教養あるイタリア語ができないということです)。
そして、こんな状況なのに、教育費削減の嵐で、ますます学校教育を取り巻く環境はひどくなっているそうで、イタリアの未来を担うはずの若者に教育の投資をしないこの国に未来はないとおっしゃっていました。

余談ですが、イタリアの教員のお給料は大変低いので(男性なら、それだけでは家族を養っていけません。そのため、イタリアの小中高の教員のほとんどは女性です)、日本では考えられないでしょうが、大抵の先生方は家庭教師のアルバイトをしているのです。


息子は理系普通科高校でしたが、古典を重んじるイタリアの教育ですから、理系でも、ラテン語や哲学は必修科目として学ばなけらばなりませんでした。
哲学は4年間だけでしたが、ラテン語は、イタリアの古語、西洋言語の元となった言語ですので、5年間の必修でした。
ちなみに、文系普通科高校では、ギリシャ古典を読むための古代ギリシャ語も必修科目になります。その代わり、数学や物理の比重は少なくなります。

私も、息子の高校時代に色々な先生方とお話することで初めて知ったことなのですが、ラテン語は論理的な言語なため、数学とよく似ているそうなんです。

ラテン語につまずく子は、数学にもつまずく。
数学が苦手だと、ラテン語も苦手。

よくそういう風に言われて、私は半信半疑でしたが、確かに、クラスの子どもたちを見ていると、そういう成績になっていたので、多分本当のことなのでしょう・・
息子が、最初は苦手だったラテン語が得意科目になったのは、この先生のおかげです。

ラテン語ができるということは、実際には使うことのない言語とはいえ、日本でもかなりインパクトがあるようです。
古語としてみっちり学んだわけですから、当たり前ですけど、たぶん、日本の大学教授よりは息子の方がラテン語はできると思います(笑)。
何しろ、ラテン語でセネカ等の古典を読んでいますから。

考えてみれば、古代ローマではラテン語が話されていたのですよね。
その後、イタリア語というか、イタリアの各地で方言のようなものが生まれてからも、聖職者や教養のある人たちはラテン語で会話をしていたわけです。
全ヨーロッパの知識人は、ラテン語を共通語として話していたのです。
ちょうど今で言う英語のようなものですね。

古代ローマ時代の栄光・・
先生は、古代ローマ人はコンピューターのような頭脳を持っていたと言います。
確かに、2000年も昔に、ローマでは既に上下水道も完備していましたし、耐震技術の建築法も持っていたんですよね・・
古代ローマ人は、その後、数々の民族と交わってしまったため、もはや、古代ローマ人の純粋の血を引くローマ人はいなくなってしまったと言います。

確かに、今のローマっ子がコンピューターの頭脳を持っているとは言い難い・・


さて、皆さまは、ローマ市のモットーをご存知でしょうか?
ローマにお住まいの方はご存知だと思いますが、街角のあちらこちらで見られる「S.P.Q.R」の文字!
そう、これが、ローマ市のモットーなのです。
S.P.Q.Rとは、Senatus Populusque Romanusの略。
ラテン語で「元老院とローマ市民」という意味で、古代ローマの共和制の成立を記念する言葉だったそうです。

この、S.P.Q.Rですが、口の悪いローマっ子が何と言っているか知っていますか?
Sono Porci Questi Romani(このローマ人たちは豚だ)
まったく!
そんなこと、自分で言うかしらね~!?
余りにも自虐的~~
そこが、現代ローマ人の良さなのでしょうか!?



by mayumi-roma | 2012-03-13 07:35 | 息子・私・家族のこと

上野真弓、ローマ在住の翻訳家&文筆家&ツーリズム別府大使。日々の暮らしや芸術探訪、旅の記録。最新刊は訳書『ミケランジェロの焔』、著書に『教養としてのローマ史入門』、訳書『ラファエッロの秘密』など。お仕事のご依頼はoffice.uenomayumi@gmail.comへ。


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