この世で最も美しい彫刻♪
2010年 02月 24日
「アポロンとダフネ」ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ作
ローマ・ボルゲーゼ美術館
昔、私がアナログのカメラで撮影した写真です。
これが、私がこの世で一番美しいと思う彫刻です。
メタモルフォシス(何かが他の何かに変わること)を、これほど美しく哀しく詩的に表現した彫刻は他にないと断言できます。
恋焦がれるアポロンが逃げるダフネを追い詰めて、まさにその手で触れた瞬間に、月桂樹に変わり始めるダフネ・・
窮地を救われたダフネ・・
永遠にダフネを失ったアポロンの落胆と驚き・・
私がベルニーニを敬愛する理由はここにあります。
卓越した表現力・・
一瞬を永遠に置き換える力とでもいいましょうか!?
メタモルフォシスの瞬間をここまで見事に表現出来るなんて・・
神が降りてきた・・としか言えません。
「アポロンとダフネ」の物語は、ギリシャ神話のエピソードの一つです。
ダフネは、河の神様の娘でした。
恋も知らず、狩りの処女神・アルテミスにつかえて、鹿を追っては野山を駆けめぐる日々。
ボーイッシュな彼女は魅力的でたくさんの男性が言い寄りましたが、ダフネは見向きもしませんでした。
ある日、愛の女神・アフロディーテの息子・アモール(キューピッド)がいたずらをしてしまうのです。(ちなみに、アフロディーテとアポロンはともにゼウスの子ども。異母姉弟です)
アポロンには「人が好きで好きでたまらなくなる矢」、ダフネには「ただもう人が嫌いになる矢」を、心臓めがけて射抜いたのです。
いたずらをしたのは、アモールの持っている弓矢が小さいとアポロンに笑われたための仕返しでした。
アポロンは急に人恋しくなって地上に降りてウロウロしている内にダフネに一目惚れし、その反対にダフネはますます1人を好むようになり人を避けていました。
胸の中の激しい思いを告げるアポロン。
びっくりして逃げるダフネ。
拒まれれば、ますます募るのが愛の常・・
執拗に追い掛け回すアポロン。
野山を駆け巡ることに慣れているとはいえ、ダフネが神様であるアポロンにかなうわけもなく、ようやく父親のいる河まで辿り着いた彼女は、息も絶え絶え、父親に頼むのです。
「お父様、あなたの娘ダフネは、逞しいお方に追われています。このままでは清い少女ではいれなくなります。どうか、私を、処女を守る狩りの女神・アルテミスにつかえる、清い少女のまま、死なせてください」
父親は、愛しい娘の願いを聞き届けました。
ようやく追いついたアポロンが、ダフネに触れようとした時、ダフネの手は木の枝に変わり、指先からは細長い葉が出てきました。ダフネは月桂樹に変わったのです。
永遠にダフネを失ったアポロンは、それでも彼女を忘れることが出来ず、「アポロンの木」と名づけたのです。
香り高い月桂樹は、ダフネの美しい香りだったのですね・・
ボルゲーゼ美術館
Piazzale del Museo Borghese 5
00197 Roma
by mayumi-roma
| 2010-02-24 04:41
| ローマの美術・歴史散歩