「天使と悪魔」の足跡:その1-2

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サンタ・マリア・デル・ポポロ教会の内部

物語の中で、誘拐された4人の枢機卿の最初の殺人現場となった教会です。
内部は、たぶん数々の芸術品を保護するためでもあるのでしょう・・
ほとんど照明がなく、昼間でも真っ暗です。
そのせいか、とても荘厳な感じがします。


教会の建築様式は、15世紀末の典型的イタリアン・ルネッサンスですが、内部のデコレーションは、17世紀後半、トスカーナ・シエナの銀行一族Chigi(キージ)家出身のローマ法王、アレッサンドロ7世が、お気に入りの彫刻家、バロックの巨匠・ベルニーニに一任して、リニューアルしたものです。


こんな小さな教会に、たくさんの芸術的宝がひしめいています。
ベルニーニやラファエッロは言うまでもなく、ピントゥリッキョやカラッチのフレスコ画、セバスチャーノ・デル・ピオンボが1点、また、カラヴァッジョの作品が2点あります。そのうち、1点は修復中で展示されていませんでした。



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「サン・ピエトロ(聖ペテロ)の磔」カラヴァッジョ作
私の大好きな作家の一人です。
この絵を見るために、この教会には通ったものです・・




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「天使と悪魔」の物語に出てくる、星が刻まれたマンホールのふたのようなもの。
一つだけではなく、教会中の床のいたる所にありました。





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そして、これが床にある、Chigi(キージ)家の紋章とドクロを刻んだもの。
でも、ドクロは、バロック時代には好んで使われたモチーフなんです。
人間は常に死を意識しなければいけない・・とう意味合いがあるそうです。
つまり、人間は誰でもいつかは死ぬということを頭に入れ、天国に行けるようにちゃんと生きようということでしょう・・




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これが、物語の舞台である「キージ家礼拝堂」の天井の丸屋根部分です。
丸屋根の中の部分はモザイク画です。
設計はラッファエッロ、完成させたのはベルニーニ。

残念ながら、現在修復中で、中には入れないし、祭壇や床は大きなプラスチックの布で覆われていました。
礼拝堂の内部にある彫刻の数々は全てベルニーニです。
しかし、これも、今回は、全然見ることが出来ませんでした。


ちなみに、この教会は真っ暗だと先に書きましたが、芸術品のある礼拝堂部分には、お金を入れると1,2分照明が燈る仕組みになっているのです。



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キージ礼拝堂の左に位置するお墓
これが、たぶん、法王アレッサンドロ7世のものと思われます。
大理石で出来たピラミッドが面白いですね・・
ただ、ピラミッドは、永遠のシンボルとしてキリスト教でも使われるので、完全な異教のものという訳ではないのです。



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キージ礼拝堂の右に位置するお墓。
こちらは、法王の弟か兄(イタリア語でははっきりしません)、シジスモンドのお墓。
もしかしたら、逆かもしれません。
間違っていたらごめんなさい。

2つのお墓は完全に左右対称に建てられていました。
でも、物語では、ピラミッドの中の楕円形とあった部分、単なる円形でした。


ダン・ブラウンという作家は、奥様が西洋美術史家ということですが、美術に限らず、秘密結社や歴史、宗教、象徴学にも長けた知識があって、だからこそ、このような壮大な物語が書けるのですね。
一瞬、ノンフィクションかと思ってしまうくらいにリアルですよね。

あ、「悪魔と天使」の本を読んでいらっしゃらない方、映画をご覧になってない方には、チンプンカンプンなお話だったでしょうね。



最後に素晴らしいパイプオルガンの写真を♪
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もちろん、ベルニーニの彫刻で飾られています♪





by mayumi-roma | 2009-12-02 04:06 | ローマの美術・歴史散歩

上野真弓、ローマ在住の翻訳家&文筆家&ツーリズム別府大使。日々の暮らしや芸術探訪、旅の記録。最新刊は訳書『ミケランジェロの焔』、著書に『教養としてのローマ史入門』、訳書『ラファエッロの秘密』など。お仕事のご依頼はoffice.uenomayumi@gmail.comへ。


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